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デジタルは消える運命にある?あのアプリやゲームをこの先の未来に遺す

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大切にしていたスマートフォンのゲームが、サービス終了の日から遊べなくなる。よく使っていたアプリが配信店から消え、新しいスマートフォンでは動かない。Webサイトを開いても、ページが見つからない。このような経験は珍しくない。

本は、読む人がいなくなっても、棚に残っていれば開き直せる。デジタルの作品は、同じようには残らないことがある。運営会社がコンピューターを止めたり、動かすための機器が古くなったりすると、世界中で使われた作品でも姿を消す。

アプリやゲームは、ただの便利な道具ではない。作られた時代の技術や、人々の遊び方、考え方が入っている。未来の人が今の社会を知るためにも、デジタルの作品をどう残すかは大切な問題である。

プログラムの中には、人が考えた道すじが残る

アプリやゲームを動かす命令をまとめたものを、ソフトウェアという。その命令を、人が読んだり書き直したりできる形で記した文章が「ソースコード」だ。

ソースコードを見ると、どんな順番で処理するかが分かる。機能に付けた名前や説明のメモが残ることもある。何度も書き直した記録があれば、問題をどう直し、どの案を選んだかをたどれる場合もある。

たとえば、昔の携帯電話は画面が小さく、通信も遅かった。作る人は、限られた画面へ何を表示するかを選ばなければならなかった。通信する情報を減らす工夫も必要だった。ソースコードには、当時の制限に対して、人が選んだ答えが残っている。

完成したアプリだけでも、見た目や動きは記録できる。しかし、なぜその形になったのかまでは分からないことがある。ソースコードと変更の記録を残すと、技術だけでなく、作った人の判断も調べやすくなる。

コピーできるのに、なぜ消えるのか

デジタルのファイルは、元と同じ物を簡単にコピーできる。それでも、長く保存するのは簡単ではない。

国連教育科学文化機関は、教育、科学、文化を守り広める国際的な機関だ。英語名の頭文字からUNESCOと呼ばれる。UNESCOは2003年に、未来へ残す価値のあるデジタル資料を守るための「デジタル遺産保存憲章」を決めた。

この憲章は、ソフトウェアやWebページも、未来へ残すべきデジタル資料になりうるとしている。同時に、デジタル資料は消えやすいとも指摘する。機械やソフトウェアが短い期間で古くなる。誰が保存するのか決まっていない。保存の方法も変わり続ける。何もしなければ残るとは限らない。

ファイルだけでは動かないことがある

プログラムのファイルを保存しても、実際には動かせない場合がある。

まず、どの基本ソフト向けに作られたかが重要だ。基本ソフトとは、スマートフォンやコンピューター全体を動かし、アプリが働く土台になるソフトウェアである。Windows、macOS、Androidなどがその例だ。基本ソフトの種類や版が違うと、同じアプリが動かないことがある。

ソースコードを、コンピューターが実行できる形へ変える道具も要る。この道具を「コンパイラー」という。使ったコンパイラーの名前や版が違うと、同じ結果を作れないことがある。

さらに、別のプログラム部品、専用のゲーム機、センサー、インターネット上の別サーバーが必要な場合もある。オンラインゲームでは、手元のアプリが残っていても、相手とつなぐサーバーが止まれば本来の遊び方を再現できない。

米国議会図書館は、残すことが望ましいファイルの形をまとめた文書を公開している。ソフトウェアについては、人が読めるソースコードを優先している。使ったコンパイラーの基本ソフト、版、細かな作成番号も一緒に記録するよう示している。専用のゲーム機が必要なら、その機器か、別のコンピューター上で動きをまねる仕組みも必要になる場合がある。このまねをする仕組みをエミュレーターという。

つまり、ファイルの保存は最初の一歩である。ソースコード、書き直した記録、説明書、必要なプログラム部品、作り方、動かす環境を一緒に残す必要がある。完全には再現できない場合でも、何が足りないかを記録すれば、未来の調査に役立つ。

世界中のソースコードを集める取り組み

公開されているソースコードを集め、保存し、読めるようにする国際的な取り組みがある。「Software Heritage」という。名前は「ソフトウェアの遺産」という意味だ。

Software Heritageは、ソースコードが置かれている開発用のWebサイトを自動で調べて保存する。利用者が保存を依頼する方法もある。現在のファイルだけでなく、どこから来たか、どのように書き直されたかという履歴も集める。

保存したソースコードには、中身と結び付いた特別な番号を付ける。普通のWebアドレスは、サイトがなくなれば使えなくなる。中身から作る番号があれば、保存場所が変わっても同じコードかを確かめやすい。研究で使ったプログラムの版を示したり、昔の版と比べたりするときに役立つ。

UNESCOはSoftware Heritageと協力し、ソースコードを人間の知識や工夫の記録として扱っている。2019年のParis Callという文書では、ソフトウェアを作ることは人の知的な仕事であり、ソースコードには知識が入っていると説明した。

ここでいう「遺産」は、古い物を博物館に飾ることだけではない。未来の人が学び、研究し、新しい物を作るために、今の社会から受け渡す記録という意味である。

何でも自由に保存、公開できるわけではない

すべてのソースコードが公開されているわけではない。会社の秘密や著作権で守られたものがある。個人情報が入っている場合もある。安全のため、広く公開しないほうがよい情報もある。

オンラインサービスは、利用者のデータや、別の会社が動かす仕組みに頼っていることが多い。運営会社以外が全体を保存できない場合もある。未来へ残す価値があるからといって、すぐ全員へ公開してよいとは限らない。UNESCOの憲章も、資料を読めるようにすることと、人の権利や秘密を守ることの両方を求めている。

すべてのソフトウェアを、同じ詳しさで残すのも難しい。社会へ与えた影響、新しい技術、地域や言語の違い、消える危険の大きさを考えて選ぶ必要がある。その選び方も記録しなければ、有名な会社の製品だけが歴史に残り、小さな集まりや個人が作った物が消えてしまう。

AIがコードを書く時代に、何を残すのか

AIがソースコードを書く機会は増えている。すると、保存できるコードの量も急に増える。一方、完成したコードだけでは、誰が目的を決めたのか、人がどこを確かめたのか、どの案を使わなかったのかが分かりにくい。

だからといって、AIが途中で出した物を全部、無条件に保存すればよいわけではない。公開したソースコードと変更の記録を中心に、使ってよい条件、正しさを確かめた方法、大切な設計判断、AIを使った範囲を残すことが重要になる。入力に個人情報や秘密が含まれるなら、それを守ることが先である。

「将来のAIなら古いコードを作り直せるから、保存しなくてよい」という考え方には問題がある。AIは、失われた事実を確実に取り戻せない。似た動きをするコードは作れても、それが本当に使われたコードか、当時の作者がどう考えたかを証明できないからだ。AIが復元を助ける未来でも、比べるための元の資料が必要になる。

これから大切なのは、保存したファイルの数だけではない。どの版を残したか。誰がどこで作った物か。使う権利はどうなっているか。動かすための環境をどこまで記録したか。有名な作品だけでなく、さまざまな人の考えを残せているか。こうした情報と一緒に受け渡せたとき、アプリやゲームは未来の人が学べる文化遺産になる。

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